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2019年8月27日 (火)

【シリーズ】エフアール「鈴木義彦」  西義輝が残した「遺書」を一部公開(5)

先に「分析・詳解 95億円貸金返還請求訴訟」の記事で、A氏が裁判所に提出した証拠(未提出分を含む15点)を掲載したが、読者より「もう少し詳しい説明が欲しい」という問い合わせがあった。
そこで、改めて証拠一点一点について、それが作成されたときの経緯や背景事情を具体的に取り上げる。

(1)合意書
 平成11年7月8日にA、西、鈴木の三者が「合意書」を交わした。同年の5月末に西が宝林(現サハダイヤモンド)の株式800万株を買収し、鈴木と西は同株をテコに大掛かりな仕手戦を仕掛けようとするが、株価を安定的に高値維持させる資金が覚束ず、宝林株800万株の資金3億円を出してくれたAに相談を持ちかけたのが7月8日だった。
 Aや西と会った際の鈴木は、どちらかと言えば寡黙で、常に西を立てる対応が多かったが、その日は別人のように饒舌で、Aを説得し続けた。「これまでに20~30億円という授業料を払ってきたので、(利益を出す)絶対の自信があります」と力説し、株取引は宝林株で終わらず、いくつもの銘柄を仕掛けていくので安定的に資金が必要であり、それを社長にお願いしたい」と依頼した。さらに鈴木が、Aに負っていた多額の債務を返済するためにも、この株取引を成功させたいと力説したことからAは応じた。
ところが、鈴木は貸金返還請求訴訟の法廷で「Aから資金提供を受けるために必要だという西に協力して、書面に署名したに過ぎず、それを実行するという認識はなかった。事実、その後、社長とは株の話は一切していない」と主張した。
西がAから宝林株800万株の取得資金3億円を借り受け、その直後からの株取引で株価を高値誘導するための買い支え資金もAから支援を受け、実際に鈴木の指示する銘柄の株価を高値誘導し、そのタイミングで鈴木の側近であった紀井義弘が売り抜けた事実は、紀井の証言からも揺るがない。
西が鈴木に言われるままにAに株取引の情報を入れず、またAと鈴木の関係を故意に希薄にするような対応をしたために、Aは蚊帳の外に置かれたような状況に置かれたが、そのことで『合意書』に基づいた株取引は無かったという鈴木の主張は正当化などできるはずは無かった。何より、西が志村化工の相場操縦容疑で東京地検に逮捕された際、鈴木の側近であった武内一美も逮捕され、鈴木の関係先が家宅捜索されていた。取り調べで、検事が執拗に鈴木の関与を追及しても、西が頑なに否認し続けたからこそ、鈴木は首の皮一枚で助かったようなものだった。
また、宝林株の売却利益について、鈴木自身が「JAS(宝林)の件では、双方(社長と西)に資金を渡しているはずです」と、「合意書」の効力(実績)を認めている。すでに触れたように、西は宝林株取引の利益分配で30億円を受け取った事実を明らかにしたが、鈴木はいつ、いくらをAに渡したというのか?

(2)念書
 平成9年9月初旬から同10年5月にかけて、鈴木が資金繰りのためにAから借り受けた金員は約28億円に上った。その内訳はエフアールの手形13枚で総額約17億円、借用書で3億8000万円だったが、その他にいくつもの物品を持ち込んでAに買ってもらった中にピンクダイヤモンド(1億3000万円相当)とボナールの絵画(1億7000万円相当)があった。鈴木は後日、ピンクダイヤモンドと絵画、さらにはAが保有していた高級腕時計を「売らせてほしい」と言って持ち出したにもかかわらず、売却代金も払わず現品も返却しなかった。それらの売却代金約7億4000万円も、準消費貸借として鈴木の債務となった。
 証拠である念書は平成10年5月28日、鈴木がAの会社を訪ねた際に持参してきたもので、エフアールの常務取締役、天野裕の署名、押印もあって、Aはピンクダイヤモンドを鈴木に預け、念書を受け取った。
ところが、その3日後の5月31日、鈴木は親和銀行を巡る不正融資事件で警視庁に逮捕された。Aはその情報を入手していて、5月28日に鈴木に伝えたほどだが、それでも鈴木の依頼に応えてピンクダイヤモンドを預けたのはAの温情だった。しかし、鈴木はAの温情を悪用した。
Aに買ってもらったはずの絵画は、すでに他の債権者に担保として預けられており、また高級時計は知人に持ち込んで6億円を借入した事実が確認されている。
また、鈴木は、平成9年10月15日付の3億円の融資で作成した借用書をもって「Aより買ったもので、それが3億円の借用書」と主張した。ピンクダイヤモンドをAから預かる7カ月も前のことである。まったく支離滅裂な主張でしかなかった。

(3)確認書
平成11年11年9月30日付けで、Aがエフアール宛に出した「確認書」は、鈴木が融資を受けるためにAに振り出した手形(13枚)を、同社の監査の都合上、どうしても一旦お預かりしたいという鈴木の依頼に応え、Aの温情で手形の原本と共に渡したものだった。もちろん、それまでに貸付金の返済は一切ない。
ところが、鈴木はこの「確認書」を悪用して、「Aに対する債務は完済された」
という主張を法廷の場に持ち込み、さらに「債務者はエフアールで、被告は関知しない」とまで主張した。しかし、当時のエフアールは、経営が危機的状況にあり、手形を持ち出した経緯から見ても、鈴木個人の責任ははるかに大きかった。Aが金員を貸したのは鈴木個人であって、会社であれば天野が対応しなければならなかったが、当時Aは天野とは面識すらなかった。
西が15億円をAの会社に持参したのは同年の7月30日のことで、Aは翌日、西と鈴木を会社に呼び、15億円の処理について確認し、西も鈴木もそれぞれ5000万円を受け取ったことに礼を述べていた。そもそも9月30日に金銭の授受は一切なく、その後の天野との面談でも天野は「会社に債務を返済する資力は無く、『確認書』は便宜的なものだった」と認めていた。なお、鈴木はAの手元にある多くの「借用書」や「預かり書」等の書類の全ての原本を「回収漏れ」と言ったが、鈴木を知る誰もが「鈴木は相手方には出来るだけ書類を渡さずに口約束だけをして、仮に書類を出すことがあった時には、100%回収することに執着する男で、回収漏れなど絶対にあり得ない」と言う。
平成11年7月30日に西がAに納めた利益の分配金15億円について、鈴木はAに対する債務の返済金であると言って、「確認書」との整合性を取るために支払日を無理やり9月30日と主張した。しかし、西が15億円をAの会社に持参したとき、Aは「合意書」に基づいて、自分の取り分を5億円とし、残る10億円は西と鈴木のAに対する債務の返済金に充てるという手続きをした。また、西の無心に応えて、「鈴木さんと分けなさい」と言って西に1億円を渡した。その翌日、Aの会社に西と鈴木が訪れた際、15億円の処理と1億円を西に渡した件を鈴木に確認すると、鈴木は「有難うございました」とAに礼を述べた。15億円が鈴木の言うように返済金であるとしたら、そのうちから西と鈴木にそれぞれ5000万円を渡すようなことは無かったはずだ。

(4)借用書(15億円)
平成14年6月27日、Aが鈴木に対する貸付金の整理をするために鈴木を会社に呼び確認を進めた際、鈴木が「A社長への返済で西に10億円を渡した」と主張した。驚いたAが同席していた西に確かめたところ、西が授受を渋々認めたために、鈴木への債権25億円から10億円を差し引いて15億円とし、西も10億円の借用書を書いた。Aは鈴木に対し「私に対する返済金であれば、なぜ直接来て話をしなったのか。二人で『有難うございました』と言うのが当然のことでしょう。もしそれができないときでも、なぜ『西に私への返済金の一部として渡した』とうことを、最低電話ででも何故言わなかったのか」と言うと、鈴木は「済みませんでした」と言って謝罪し俯いた。ところが、西が鈴木から受け取った10億円はAへの返済金などではなく、「合意書」の破棄を西に執拗に迫り、その結果、複数回にわたって西と鈴木の間で報酬名目の金銭の授受が発生したものであった。平成18年10月16日の三者協議の折に、西が鈴木に「これくらいは認めろ」と言うと、鈴木も渋々認めた。
鈴木はその後、法廷に提出した証拠資料(「乙59号証」)の中で、「6月27日に、原告(A)との間で債務合計金25億円とする準消費貸借契約の合意をしたことがあるか」という被告側弁護士の質問に「全くない」と言い、続けて「西に対して『原告に支払うべき25億円のうち10億円は西に預けている旨を述べたことはあるか」という質問にも「ない」と言って、Aからの借入金を25億円に減額する旨の協議など6月27日には無く、Aへの返済金10億円を西に渡したことさえも否定した。当日の借用書には確定日付がある。
しかし、これまで触れている通り、Aが「今後は株で大きく利益が出るから、鈴木への貸付金40億円以上(約束の遅延損害金30%では60億円以上)を25億円にして欲しい」という西の依頼を了承して6月27日の面談協議になった経緯があり、その場で鈴木が「西に10億円を渡した」という発言がなければ、さらに減額した15億円の借用書を作成することなどなかったし、西もまた10億円の借用書を作成してAに渡すことなどなかった。

(5)和解書
平成18年10月16日に作成された「和解書」について、鈴木は「西が香港で殺されかけたという事件の容疑者にされる、という不安と恐怖感、そして側近の紀井に裏切られたという衝撃から、書面に署名指印してしまった」と主張して、「公序良俗違反」「強迫」「心裡留保」という根拠を並べ立てた。あたかもAと西に脅かされたからということを強調した。さらに、Aの会社はビルの8階にあるが、そのフロアーに上がるエレベーターを止められ、監禁状態に置かれたとか、Aと反社会的勢力の大物とのツーショットも見せられた、と言い、脅迫を受けたかのごとき主張をした。しかし、当日の面談は録取されており、Aや西が鈴木を脅かした事実など無いことは明白で、紀井が鈴木の指示で取得株式を売り抜け、巨額の利益金を確保している事実を突きつけられたため、弁明が通らないと覚悟して、それでも隠匿資金の流出を最小限に食い止めるために、さっさと「和解書」に署名、指印したことが推察される。なお、鈴木は「合意書」も「和解書」も2度3度と注意深く読んでおり、「文言に不備があれば修正する」というAの言葉にも応じて署名、指印したのである。ちなみに、裁判に提出された音源は最後の部分が切れているという不手際があったが、西が別途に録取したものには録音されていた。
「和解書」作成後、鈴木は頻繁にAに電話を入れ、「和解書」を追認する言動を繰り返した。さらに、同年10月23日にはAの会社を訪れ、「和解書」に記した50億円の支払方法等について、より具体的な内容に触れた。(当日の録音記録がある)
前記電話でのAとの会話の中で、鈴木が「西が株を買い支えするために蒙った損害は70億円と言っているが、正確な数字を知りたい」と尋ね、2~3日後にAが58億円数千万円と伝えると、鈴木は「その損失額は利益から差し引いて3等分するべきですね」と言った。この発言は、まさに「合意書」に基づく株取引が実行された事実を鈴木自身が認めたものだった。
三者協議の場で、紀井が株取引の実態を証言した事実を巡って、鈴木が西義輝に対して「じゃあもう命落とせば良いじゃないか今。そんだけの腹あるのかお前」(録音記録より)という発言をしたが、「強迫された」と言っている人間が、強迫しているという人間に吐く言葉ではない。

 

 

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