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2017年7月31日 (月)

【新連載】「田中角栄」再検証(3) 自民党から失われた戦後保守政治の「良識」

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角栄が「吉田→池田→佐藤」の歴代首相に仕えた政治家だったことは前回述べた通りだ。首相就任のタイミングでも大量の札束が舞った「角福戦争」を制し、結果的に佐藤を引き継ぐ形での就任となった。「吉田→池田→佐藤」のラインとくれば、「戦後保守」そのものだ。吉田を戦後保守の出発点と見なすことについてはさほど異論はないものと思われる。元外交官で現実主義者の吉田はいわゆる「吉田ドクトリン」の路線をしいた。つまり、軽武装・経済優先という国家的選択だ。中国・旧ソ連を除いた「片面講和」と日米安全保障条約をセットに、安全保障はアメリカに依存しつつ、経済的発展につとめるという選択をしたのだ。吉田ドクトリンは、「戦争はもうごめんだ」という国民的感情と戦争への反省から、戦後日本の軍事的拡大では大きな歯止めとなり、経済的には、池田内閣の「所得倍増計画」を経ながら急速な戦後復興とその後の経済的成長をもたらしたことはいまさら言うまでもない。

吉田学校の末席にあった角栄もこうした戦後保守の方向性を踏襲した政治家だった。朝鮮戦争が勃発し、アメリカの要求で自衛隊の前身である「警察予備隊」の設置と憲法改正を求めてきた際に、「自らが日本に手かせ足かせをかけた憲法だろうう」とこれを突っぱねた吉田の姿勢について角栄は秘書の早坂茂三相手に話してこう評価している。

「そこが吉田さんの偉いとこなんだな。吉田さんと当時の自民党の見識というものだ」

というよりも、こうした吉田の姿勢は角栄にとって好都合だったとさえ言える。角栄にとって「政治とは生活」だったからだ。明治の近代国家樹立以来、開発の熱が注がれたのは、太平洋ベルト地帯を中心とした太平洋側の〈表日本〉で、1年の半分が積雪に埋もれ病人が出ても山を越えるトンネルすらなく、食糧や労働力、資源の供給源として都市部に搾取される〈裏日本〉。新潟の寒村から小学校を出てすぐ裸一貫で上京した角栄にとって、この「開発格差」こそがまず最初に解消されるべき政治課題だった。そして議員になってからは、国土開発、住宅政策、道路法の抜本改正など、まさに「生活」を変えるべく議員立法を通しつづけた。その完成形が、首相になると同時に掲げた『日本列島改造論』で、軽武装・経済国家路線だったからこそ傾注できる政策だった。

同じ大正7年生まれで、やはり同じ1947年の総選挙で同期当選した中曽根康弘との政治家人生と比較した場合、両者の対照はより際立つことについては前にも触れたが、ここでもそれは同様だ。初当選時、中曽根は群馬3区でこう説いて回っていた。

「天皇制を維持して社会変革の青写真をつくり、傷つける者をいたわり、悲しめる者を慰めあって、民族の個性と伝統を守りながら独立に向かわねばならない」

角栄の口からは「生活」や「人」という具体しか出ない一方、中曽根は「天皇制」や「社会変革」、「民族」、「伝統」が語られていたのだ。

そんな角栄も、自らが首相就任時にオイルショックの影響もあって狂乱物価に見舞われ、開発路線に歯止めをかせられた。貿易で稼いだカネの過剰流動性が高まり、投資先を探していたのだ。たしかにまだ開発が行き届いていない地方はたくさんあったが、日本全体が中流化し、角栄の言う「生活」は政治課題から後退しつつあった。そして角栄が退場して後、中曽根が長期政権をしく時代となり、中曽根の次の首相になった竹下の経世会は割れていく。

戦後の自民党を派閥の流れで見てみた場合、まず1955年に左右社会党の統一の危機感から生まれた自民党は、自由党と民主党の左右が大同団結した党として生まれた。そして、岸の民主党系政権があったものの、当初は吉田の自由党系政権が長くつづいた。会派で言えば、吉田を引き継いだ池田の宏池会と、岸を引き継いだ福田の清和会だ。その両者の間にありながら、戦後保守の姿勢は維持し、角栄派の木曜クラブから経世会、平成研究会へとつづく路線が、ある時期の自民党政権を長く支えた歴史と言える。自由主義的だが官僚的な宏池会と国家主義的でタカ派急進的な清和会、そして、田舎出身の党人派が多い平成研究会がバランスをとっていたと言える。

ところが、戦後保守はネトウヨが跋扈する昨今、極めて旗色が悪い。吉田の軽武装・経済国家は、たしかに戦後民主主義をもたらしはしたが、敗戦直後の現実主義的な判断に過ぎないのであって、むしろ、現在にいたる様々な矛盾のもとになったという見方だ。そして、吉田・佐藤的なものが否定的に見られ、岸・中曽根・安倍的なイデオロギーが前面に押し出されることになった。
(本誌・原正吾)

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