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2017年7月11日 (火)

【特別寄稿】 「芸能界は独占禁止法違反」、音事協によるタレント引き抜き禁止や独立阻止などの「カルテル」が長年にわたって横行

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7月7日、NHKのニュースで「大手芸能事務所など不公正な契約ないか調査 公取委」という報道がおこなわれた。

NHKによれば、「公正取引委員会が大手芸能事務所などを対象に独立や移籍を一方的に制限するなど、独占禁止法に抵触するような不公正な契約が結ばれていないかどうか、調査を始めたことが関係者への取材でわかりました」という。清水富美加やSMAP、能年玲奈、安室奈美恵など、近年、タレントが所属する芸能事務所と移籍や独立をめぐってトラブルにケースが増えているのは御存知のとおり。これに対応するため、ついに公取委が芸能界の調査に乗り出したのだ。芸能界と独禁法というと、ピンと来ない人もいるかもしれないが、「芸能界は独禁法違反だ」というのは筆者のかねてからの主張である。筆者はその名もズバリ『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』(鹿砦社)という書籍を2014年に、『増補新版~』を昨年、出版している。

そして、今年3月、筆者は公正取引委員会競争政策研究センターの求めに応じ「独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題」と題する講演をさせていただく機会をいただいた。<講演で使用した資料>

公取委での講演の打ち合わせなどで、職員から「芸能界と関係の深い政治家はいるのか?」とたびたび言われたので、「ひょっとしたら」と思っていたが、今回、NHKの報道で公取委が実際に芸能界の調査を行っていると知り、驚くと同時に芸能界の悪弊が一掃されることに大きな期待を寄せている。そもそも私は芸能界の移籍・独立トラブルに関心を持ったのは、2009年に起きた「北野誠事件」がきっかけだった。
お笑いタレントの北野誠が出演していたラジオ番組『誠のサイキック青年団』(ABCラジオ)において不適切な発言をしたことを理由に芸能活動の無期限謹慎に追い込まれた事件だが、問題となった「不適切な発言」が何なのかすら明かされず、芸能界の不透明さを世間に印象づけた。

当時、筆者はある月刊誌の求めに応じ、この事件を記事にした。その取材の過程である週刊誌記者から大手芸能事務所の大半が加盟し、北野の無期限謹慎処分を主導した一般社団法人日本音楽事業者協会(音事協)について、「音事協は芸能界最大の談合組織。音事協加盟芸能事務所間では、タレントの引き抜きが禁止されている」と話していた。

引き抜きの禁止に加え、芸能界ではタレントが独立すると、業界を挙げて潰しにかかる。独立も移籍もできなければ、タレントは所属事務所に隷属を余儀なくされ、搾取や過重労働、枕営業などの人権侵害が常態化している。

この原型となっているのは、1953年、当時の大手映画会社5社が映画会社に所属する俳優の引き抜きを禁じることを目的とし、締結した「五社協定」と呼ばれるカルテルだ。五社協定は締結した当初から、批判の声が上がっていた。例えば、「マスコミ帝王」と呼ばれた大宅壮一は「今や映画界がカルテルの方向で一歩前進したものと見てよい。もちろん、これではせっかく高められてきた日本映画の質的向上を阻止し、さらに後退させるばかりなく、明らかに人権ジューリンで、新憲法に反するものである」と『毎日新聞』に寄稿している。

五社協定というと、女優の山本富士子が干されたケースが有名だが、実は公取委が重大な関心を持ち、調査をしていたことがある。1957年、独立映画株式会社が製作した『異母兄弟』に東映社所属の南原伸二、東映と契約が切れた直後の高千穂ちづるが無断で出演したことが問題となり、東映の求めに応じた松竹が自社チェーンでの上映を中止した。

この動きに反発した独立映画は映画会社5社に対し民事訴訟を提起するとともに公取委にも五社協定が独禁法違反にあたるとして申告した。

1963年、公取委は審査の結果、五社協定が独占禁止法第19条(不公正な取引方法)の一般規定の1(共同の取引拒絶)に「違反する疑いがあった」と認定した。映画会社が問題の条項を削除したため、不問に付されたが、その後も五社協定の実態は変わらなかった。

そして、同年、渡辺プロダクションが主導し、芸能事務所の業界団体である音事協が設立されたが、そのモデルとなったのが五社協定だった。音事協に加盟する芸能事務所社長のインタビュー集である『エンターテイメントを創る人たち 社長、出番です。』の中で第一プロダクション社長、岸部清はこう語っている。「そもそも、タレント独立問題が背景にあって、ちょうど映画の五社協定に似た形で、親睦団体を名目に創設したわけです」

その後、芸能界でタレントが所属事務所から独立すると、音事協がテレビ局などに圧力をかけているという報道が相次ぐようになる。1980年、渡辺プロから独立し、干されていた森進一が大原麗子と結婚した際、披露宴で仲人を務めた自民党代議士、山中貞則は「今の芸能界にはいろいろと目に見えない掟があるようで、(中略)私は独禁法の権威でありますが、仮に事業者団体が特定の者を排除しますと、独禁法が発動されることになる」と述べ、週刊誌で大きく報じられた。

このように芸能界が独禁法違反ではないかという指摘は、かなり以前からあるのだ。この部分をつつかれると、芸能界は非情に弱い。そこで、芸能界は「マスコミに指摘させない」という方針で対処してきた。

それが端的な例が1971年に起きた「芸能界相愛図事件」だ。同年7月、『週刊ポスト』が多数のタレントの異性関係を暴露する「凄い芸能界相愛図」と題する記事を掲載した。これを問題視した音事協は会員の芸能事務所に対し、小学館が発行するすべての出版物からの取材を拒否するよう要請した。人気タレントの出演しない出版物は売れない。小学館は音事協に降参し、新聞各紙に謝罪広告を掲載した。

その後も同様の事件が続き、マスメディアは大手芸能事務所を刺激するような報道を自主規制するようになった。もちろん、芸能界の構造を根本から否定する「芸能界は独占禁止法違反だ」とする筆者の主張は、これまでマスコミで取り上げられたことはない。

さて、先のNHKの報道では、公取委は芸能事務所とタレントが交わす契約書を調査しているようだが、筆者は契約書だけでは芸能界の問題の本質は明らかにできないと思う。有名な話では、吉本興業では芸人と契約を交わしていないという。吉本と言えば、お笑い業界の独占企業であり、強烈な支配力を持っている。契約で縛るまでもなく、吉本に謀反を起こした芸人をただちに締め出すことが可能なのだ。

筆者は日本の芸能界の宿痾は音事協におけるタレントの引き抜き禁止と独立阻止にあると見ているが、公取委がこれを立証は困難であろう。大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件で有罪判決を受けた元特捜検事の前田恒彦氏は、以前、ツイッターで「確かに現職時代に芸能事務所の内偵捜査をやったが、報復を恐れて協力者が出ず、やっと出た告発者は不純な動機ばかりなど、魑魅魍魎だった」と述べたことがある。

前田氏の言う「報復」というのは、「しゃべったら、消される」という意味である。芸能界の実力者は暴力団との関係が深いとされてきた。筆者は暴力団の恐怖の神話によって、芸能界のカルテルは維持されてきたと考えている。

江戸時代、芸能に携わる者は、「河原者」「河原乞食」などと言われ、蔑まれ、「悪所」と呼ばれる盛り場に隔離され、制度の外にいる者として課税もされなかった。現代の芸能界も社会のルールを逸脱した、一種の治外法権のような存在だったが、今後はそうもいかないだろう。

2010年から経済産業省では「クール・ジャパン室」が設置され、日本の文化輸出を国策として推進しているが、2016年8月15日、世耕弘成経済産業相は記者会見でSMAPが年内で解散することに触れ、「コンテンツのアジア展開にとって今回の解散は決してプラスにはならない」と述べ、現在の芸能界のあり方に疑問を呈している。

長らく続いたカルテルにより、日本の芸能産業の国際的な競争力の地盤沈下は否めない。今こそ、改革を断行し、視聴者とタレントのための芸能界を取り戻すべき時だ。
 
☆ 星野陽平
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