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2017年2月14日 (火)

【アウトローな豆知識】 暴走するトランプ、中東で「危険なゲーム」を始める、15日訪米のイスラエル首相ネタニヤフと何を話すのか

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イスラム圏7カ国に対する「入国禁止令」などで、全世界から非難を浴びているトランプ。米連邦地裁は3日、この大統領令の一時差し止めを命じ、同高裁でもトランプ側の訴えが却下されたため現在、イラン、イラク、シリアなど7カ国からの入国禁止は解除された状態になっている。司法によりわずか1週間で「大統領の権威」を覆されたわけで、「対テロ・不法移民対策」を目に見える形でアメリカ国民に示したかったトランプとしては大きな痛手だろう。それでもトランプはまったくめげる様子がない。ツイッターなどで連邦地裁判事の個人攻撃を繰り返し、司法との全面対決も辞さない構えだ。しかし、今回の大統領令は「信教の自由」をうたう憲法修正1条に違反する疑いがあり、「9・11以降の米本土で対象7カ国の出身者がテロ攻撃に関与した事実はまったくない」などとした連邦地裁の判断は極めて正当と見られている。連邦第9高裁も9日、大統領令の効力停止を正式な訴訟で支持した。
 
そうした中、イランは先月29日、中距離弾道ミサイルの発射実験をおこなった。イラン側の明確な動機は不明だが、「入国禁止令」の2日後という微妙なタイミングだったことは事実。これにつかさず反応したのがトランプ政権で、大統領補佐官マイケル・フリンは1日、国連安保理決議2231号に反するなどと「警告」した。その後の対応も素早く3日には、イランに「追加制裁」を科している。米財務省が公表した制裁リストは、イランのほか中国、レバノン、アラブ首長国連邦を含む25の個人と団体に及んだ。「つけ焼き刃」的な拙速が目立つトランプ政権にしては詳細な内容で、弾道ミサイル計画を担うイスラム革命防衛隊の「調達ネットワーク」にまで具体的に踏み込んでいる。おそらくオバマ前政権時代から情報機関が調べ上げてきたものを、ここで出してきたのだろう。さらに7日のロイターの報道によれば、トランプ政権はイスラム革命防衛隊の「テロ組織指定」をも検討しているという。
 
もはや、トランプ政権は「対イラン強硬路線」に大きく舵を切った、と見て間違いない。訪日中だった国防長官ジェームズ・マティスも4日、イランを「世界最大のテロ支援国家」と非難した。マティスは海兵隊出身で、オバマ政権時代に大将としてアメリカ中央軍司令官にまで昇りつめた人物。しかし、オバマが進めようとした「イランとの核協議」に反対し、2013年に同司令官を解任された。どうやらマティスは、イランを「イスラム国」(ISIL)以上の脅威と考えているようで、シーア派武装組織「ヒズボラ」が83年10月、レバノンでおこしたある事件をいまだに忘れられないという。非武装の「異教徒」を無差別殺戮するISILのテロとは30年以上もたっており隔世の感もあるが、この時ヒズボラが敢行したのは、米仏海兵隊兵舎に対する自動車爆弾攻撃で、米兵241人・仏兵58人を葬り去るものだった。たしかにイランに支援されたヒズボラは80年代に、ハイジャック、誘拐を含むテロ活動を世界各地でさかんに展開したのは事実である。しかし、そのターゲットは、アメリカとイスラエルの政府・軍事施設に限られていた。マティスがイランに「敵意」を燃やす理由は他にもある。03年の「イラク侵攻」時、マティスは「第1海兵師団」を現地で指揮したが、シーア派の武装集団からも執拗に攻撃を受けたという。元共同通信記者で参議院議員の青山繁晴は、あるネットTVで次のように語っている。「シーア派はイラン製の武器を使っていた。マティスさんは、支援しているイランへの軍事行動を進言したが、受け入れられなかった」。
 
マティスの「イラン主敵論」は、いかにも実体験を重んじる軍人らしい発想ではあるが、言うまでもなく現在、世界の脅威となっているテロ組織は、「イスラム国」(ISIL)とアル・カイダの方である。むしろイラン側はISILと実際に戦闘を繰り広げてきた。「核合意」に参加するロシア、中国も、この点からトランプ政権の政策転換を明確に批判している。さらにここで指摘したいのは、マティス、フリンらの「イラン主敵論」は、モスル奪還作戦をすすめるイラクのシーア派政権を混乱に追い込みかねない、という点だ。これまで同政権は、アメリカを中心とするNATO有志連合とイランの双方から軍事支援を受けるという「微妙なバランス」の中で対ISIL作戦を展開してきた。現在、イラクに駐留する米軍は約5200人で、NATOはヨルダン国内の基地でイラク政府軍の軍事訓練をおこなっている。一方、イランが支援するシーア派民兵(人民動員機構)はかなり精強な部隊で、モスルに迫る作戦の初期段階では政府軍にかわって戦果をあげたとされる。しかし、これ以上のイランの影響力拡大は避けたいという思惑や、モスルのスンナ派住民とISILの引き離しをめぐる戦術上の対立など、諸説あって詳細は不明だが、モスル奪還そのものの前面に立ったのはイラク政府軍だった。この辺りからイランは「米軍は物資を空中投下しISIL側を支援している」などという反米宣伝をさかんに流し始めた。オバマ前政権の時でさえ、イラク現地では、米軍、シーア派民兵、政府軍の3者は微妙な関係にあった、と言ってよい。そこに今度は、トランプ政権による突如の政策転換である。米軍とシーア派民兵との緊張は避けられず、「はたして本当の敵は誰なのか」という混乱状態にもなりかねない。すでにモスル東部を解放したとは言え、ISILが立てこもる西部地区の奪還作戦は今後、停滞もしくは破たんする危険性さえある。
 
実はこうした状況を最も喜んでいるのは、イスラエル首相のネタニヤフであろう。もともとネタニヤフは、オバマが進めた15年7月の「核合意」に絶対反対の立場で、西側の経済制裁解除によるイランの「国際社会復帰」を苦々しく思っていた。いま中東でイスラエルに対抗できる国家は、「シオニスト打倒」を公然と掲げるイランしか残っていないからだ。そのイランが「モスル奪還作戦」などによってイラク国内で増々影響力を拡大するよりは、クルド、ISIL、シーア派政府の3つに分断された現状こそがイスラエルにとって望ましく、ISILの存在は逆に都合がよいと言える。異教徒だけでなく同じムスリムのシーア派をも異端として無差別殺戮するISILだが、なぜかイスラエルだけは攻撃しない、という点に留意すべきだ。そして、このイスラエルと利害の奇妙な一致を見せているのが、スンナ・ワッハーブ派のサウジアラビアである。サウジが資金面などでISILを支援してきたことは、もはや公然の秘密であろう。「イエメン内戦」では、サウジとイランによる代理戦争が泥沼化し、数百万人規模の飢餓が発生しているとされる。
 
イスラエル首相のネタニヤフは6日、英国ロンドンを訪れメイ首相と会談した。ロイターの報道によると、ネタニヤフは「イランはイスラエルを破壊し、中東支配を狙っており、欧州や世界にとって脅威」と述べ、アメリカがイランに科した今回の経済制裁に加わるよう要請した。ネタニヤフらしい露骨な「イラン包囲網強化」の表明だ。これに対し、EU離脱を決めアメリカとの関係にすがるしかないメイは、「核合意は重要」との従来見解は崩さなかったが、イランの行動に懸念を示し同調するかのような素振りも見せた。この背景には、イエメン内戦でイランと対立するサウジに大量の武器を売りつけてきた、という英国の「死の商人」としての側面もある。しかし、トランプ訪英に反対するネット署名が瞬く間に180万人以上集まるなどメイの外交姿勢に世論の批判は強く、国内に大きなイスラムコミュニティも抱えている。そこは中東を知り尽くす、したたかな英国のこと。首相であるメイは、何の見返りもなくネタニヤフの誘いにはおいそれと乗らないだろう。
 
トランプは5日放送のFOXニュースの番組で、イランを「ナンバーワンのテロリスト国家」と口をきわめて非難し、オバマ前政権時の核合意を「最悪」と評した。さらなる追加制裁をにおわすトランプは、「見ていれば分かる」と核合意破棄の可能性も否定しなかった。すでにトランプ政権内では、マティス、フリンらの「イラン主敵論」にブレーキは掛かりそうにもない。白人至上主義のオルタナ右翼スティーブン・バノンも「ユダヤ・キリスト教とイスラム教との戦争」を公然と唱えていたような男で、今回の入国禁止令の「黒幕」と言われる。この反イスラム主義に同調し、「移民排斥」を積極的に推進しようとしているのは、なんとジェフ・セッションズという司法長官なのだから呆れるほかない。
 
今週15日、訪米するネタニヤフの狙いは、トランプをけしかけて「イラン包囲網」を強化し、「核合意」を破棄させることであろう。英国のほかサウジなど湾岸諸国を引きずり込むのはもちろん、シリア内戦でイランと協力関係にあるロシアにも外交的な楔を打ち込もうと狙っている。ネタニヤフとトランプの2人が今回、イランへの軍事行動を含めた話し合いをおこなうのは十分考えられることだ。イスラエルは81年、イラクの原子炉施設を先制攻撃(=バビロン作戦)した過去を持つ。この作戦は当時、イスラエルが持っていた主力戦闘機では航続距離が短く難しかったが、アメリカによるF16戦闘機の売却で可能になったとされる。バビロン作戦と同様にイランの核施設をたたきたいネタニヤフを、これまで政治的に阻止してきたのが、オバマの「核合意」であり、軍事的にはロシアから購入した長距離地対空ミサイルS300などの「イラン防空システム」であった。しかし、イスラエルは最新鋭ステルス戦闘機F35を50機調達する計画で昨年末、他の同盟国に先がけて2機納入された。このイスラエル独自仕様のF35は、イラン防空網をすり抜け侵入してしまうかもしれない。少なくともアメリカ側はそうした能力があると喧伝している。今後のF35の納入ペースは一つの軍事的シグナルになる。
 
これまでの報道によると、さすがのトランプも実際に核合意は破棄せず、追加制裁を絡めながら「厳格な履行」をイランに迫るのではないか、という見方が大勢をしめている。しかし、「完全に履行している」と主張してきたイラン側の反発は必至で、「核開発能力」の維持は絶対に譲れない一線であろう。イランは核合意が破棄された場合、ウラン濃縮のレベルを兵器級にまであげる、と言明している。はたして15日のトランプ・ネタニヤフ会談で何が飛び出すのか注目される。

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