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2011年12月

2011年12月14日 (水)

【特別レポート】実績なき橋下に投票した大阪はやはり「愚民の町」か

5030_5先日行われた、大阪府・市のダブル選挙。「大阪都構想」を掲げて、府知事の橋下が市長選への鞍替え出馬したことで、大きな話題を集めた。

「変化か現状維持か」。内実はともかく、お題目としては橋下と、彼が率いる地域政党「大阪維新の会」が掲げ、市民に迫った選択のスローガンがこれである。

では、対橋下で苦杯を舐めた市長の平松邦夫は何もしてこなかったのか?否である。橋下と平松、双方1期目約4年間の実績を比較した場合、少なくとも目に見える実績という意味では、平松に軍配が上がるのだ。

橋下が何らの実績も残していないことは、橋下本人の言動がこれを明らかにしている。というよりも、示せていないのだ。あるとすれば、11年連続赤字という府財政の慢性的赤字体質を解消して黒字に転換させたということくらいだ。だが、これにも裏があり、借金も収入に計上できる自治体の決算を利用しての黒字化で、臨時財政対策債という、国の地方交付税が不足した場合に特例で定められた債権を起債し、これを収入とし、黒字化させたに過ぎない。

橋下は、大阪経済の沈滞を、府と市の2重行政による不効率のせいにするが、何をか言わんやである。では、橋下は何をしたか?こうしたまやかしと詭弁を弄しているに過ぎない。確かに平松は協調路線で融和を大切にするため、市政に大鉈を振るったとは言えないかもしれない。だが、前の市長の関淳一より引き継いだ改革を着実に実行しており、財政面では、6兆円目前だった府の借金を、橋下が着実に借金を増やし続けてとうとう6兆円を突破させた一方で、市は借金を減らしているのだ。臨財債を、あくまで国の交付税減によるものであって、府独自の借金でないと橋下は強弁するが、これは市も同じであり、市は臨財債も含めて借金を減らしているのだから、橋下が言っていることは屁理屈に過ぎず、論理破綻もはなはだしい。

橋下が府知事に就任以来実行したのは、公務員改革と財政立て直しだった。就任当初の府職員・組合とのバトルは、テレビでも大きく取り上げられ、広く知られるところであろう。また、財政立て直しでは、箱モノ行政にメスを入れ、「ワッハ上方」や「国際児童文学館」の統廃合なども、やはり就任当初に大きく取り上げられた。

だが、コストカットの面で言えば、上で記したように、市は確実に財政的に好転しているのであり、公務員改革は市は既に行なわれていた。メディアが取り上げないだけの話だ。大阪市の情報公開は今や全国でもトップクラスだ。しかも、文化を解さない橋下の、曰く「民間発想」によって、廃止に追い込まれた文化施設の喪失を嘆く声は実は大きい。

唯一実績があるとすれば、国との関係であり、直轄事業負担金を見直させたということだ。だが、あくまでこれだけなのだ。

基本的に「壊し屋」である橋下の攻撃対象が国などの「外部」に向かった場合は、効果は大きい。だが、「内部」に向かった場合、もたらされるのは荒廃だけであり、悲惨な現実が残されるのみだ。

橋下が府知事を辞任し、府庁舎を去る際に、府の職員に向かって、「みなさんは優良企業の社員です」と述べた。だが、多くの職員は片腹可笑しい、というより、相変わらずのピントのズレ具合に怒り心頭であったはずだ。というのも、確実に変わったことと言えば、不効率で無意味な仕事が増える一方で給料が減らされただけだからである。

橋下は教育の改革を訴えているが、府職員と府の教員志望者は橋下の就任以来激減している。橋下が大阪の学力レベルの低下を嘆く一方で、身近なスタッフは為り手不足に陥っており、職員のレベルは確実に低下していくであろうという、なんとも皮肉な状態であるのだ。しかも、これまでは年1、2人であった職員の自殺は昨年だけで7人に増加し、7人目の経済交流促進課・参事の自殺は、「やってもやっても終わらない仕事」を嘆いたもので、橋下による叱責が原因とされている。なおかつ、箝口令を敷くというオマケ付き。府は今や、「優良企業」どころか、志望者の集まらない「ブラック企業」なのである。

橋下の政治手法は小泉の政治手法になぞらえられることが多い。事実、大阪府顧問で、現在は「維新の会」顧問となった、橋下のブレーンである上山信一・慶応大学教授は、著書『大阪維新』の中で、小泉政治になぞらえ、シングル・イシュー・ポリティクスのわかりやすさと功を解く。しかし、橋下と小泉で決定的に異なるのは、小泉はそれでも「痛みを広く分かち合う」ということ明言していたことだ。今回の選挙戦でも、平松の非をあげつらい、「都構想」の夢を語るが、橋下が掲げる公約のマイナスは一切聞かされていない。とうよりも、自らの失政に関しては、上記臨財債における詭弁で誤魔化すか、あるいは、「都構想」の具体性の無さなど、公約の空無さに関しては、「マスコミに説明してもムダ」というように、はぐらかす一方だからだ。

試しに、ネットで橋下政治の検証を検索してみれば良い。出てくるのは、橋下の発言の面白さからメディアで取り上げられた話か、あるいは、いつのまにやら消えてしまった空想プランか、もしくは、橋下政治の危険性を訴える声ばかりだ。何一つ実績らしい実績は出てこない。

橋下は今回の選挙戦・街頭で、「みなさんの給料を上げていきますよ」と語った。基本的に“上げ潮”政策の橋下は、市営地下鉄の民営化と延伸、高速道路の拡張、法人税の見直しなどで、民活と企業誘致での税収増と経済活性化をその政策としている。だが、具体的な経済政策は、当たり前の話だが、何もしていない。また、セーフティーネットや福祉の話など、口から出た験しがない。というよりも、プランが何もないのだろう。

東京一極集中で、大企業の移転が続き、経済が地盤沈下し、生活保護受給者増というのが、ここ最近の大阪が置かれた現状だ。「都構想」の夢を語るのはいいが、こうした現状をどう橋下は保証するというのだろうか。というより、何もしてこなかった橋下に大阪府・市民は何を期待しているのだろうか。

「都構想」の実態を知りたければ、前述・上山の著書を読めば将来像は見えてくる。そこには、大阪を、「若い知的ワーカーが住みたくなる」街にしたいとある。では、現在の大阪が抱える貧困層はどうするのか。明日にでも生活保護受給者からIT技術者や、橋下のような弁護士、上山のようなマッキンゼー上がりのコンサルタントにでもなれとでもいうのか。

少なくとも言えることは、今後4年間は、府で橋下が行い、「橋下劇場」とも称された、組合委員と教職員のバトル、これに加えて約6割の民主・自民を始めとする反「維新の会」の市議との議会のバトルが展開されるだけだろうということだ。橋下は、平松批判に当たって、「中之島(市庁舎所在地)中心の狭い行政」と言った。ところが、「橋下劇場」そのものが、そもそもは身近な組合・教則員とのバトルでしかなく、広く痛みを分かち合うものでない。今回の選挙による勝利は、劇場の舞台が中之島に変わっただけの話だ。

劇場から出れば観衆は日常に戻らなけらばならない。舞台がはねた4年後。大阪の観衆はどういう現実に戻らねばならないのだろうか。

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