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2009年6月23日 (火)

【連載コラム】金融経済評論家 松本弘樹「マネーゲームの罠」

334Matsumoto【第11回】証券市場と企業文化の変遷(4)

三澤千代治氏が、いかにも中途半端な形で買収し、ソフト会社に変貌させていた「ミサワバン」。この会社を事業再生してくれないか、と依頼してきた。私は独立後の最初の仕事でもあったので真剣に取り組んだ。ところが、調べれば調べるほど鉄工所がなぜソフト会社になるのかよく分らない。

当時はインターネットの隆盛期だったので、住宅産業にもネットを取り入れようとするコンセプトだったらしい。そこで無理矢理にネット企業に変身させたかったようだ。しかし、住宅とネットのコラボと言えば、マンションにネット環境を整備することや販売宣伝・設計のソフト開発ぐらいしか思いつかず、振り返ってみると何とも無駄な意味のない議論を繰り返していたような気がする。

そうは言っても私はプロのファイナンス・コンサルティングなので結局、訳が分らないまま、それらしき新規事業を加味した再生計画をつくりあげた。何度も苦労して詳細を詰め、後はファイナンス計画を世に出すだけという段階まで漕ぎつけた時、三澤氏から取締役会で決議するのでオブザーバーとして参加して欲しい、と要請があった。私は、ワンマン経営者の三澤氏のことだから、いよいよ最終決定とばかり思い込んでいた。

ところが、いざ参加してみると、私は仰天した。渋い顔をした役員の面々が、すごい形相で並んでいたからである。何か今までと雰囲気が違う。さすがに鈍感な私も、その場の雰囲気は自然と察しがついた。名刺交換をするうちに謎はとけた。役員たちのほとんどは、取引銀行(当時の東海、さくら)から送り込まれ三澤氏の「お目付け役」だったのだ。

  
だから彼らの視線や言動は、さすがに表には出さなかったけれど、「またこの親父は何をしでかしたのか」と言わんばかりだった。そうは言っても、彼らも大人である。いきなり断るのではなく、私たちが練り上げた事業プランを一通り丁寧に眼を通してくれた。しかし、その表情は明らかにポーズに過ぎなく、絶対に採用されないことは一目瞭然であった。

取締役会終了後、「結果は後日」と告げられて私たちは、そそくさと部屋を出ようとした。その時、おそらく三澤氏の子飼いであろうプロパーの販売会社社長らの同情するような視線を今でも鮮明に覚えている。「さぞ、あなた方も大変だったでしょう。私たちも大変なんです」と言いたげだった。これがミサワの現実の姿なのだと、自分に言いきかせた私は、ミサワの案件から事実上撤退する。

後日新聞で報じられた記事によれば、ミサワホームの莫大な負債の処理に絡んで三澤氏は代表の座を下ろされ、会社は銀行主導で再生を図っていくことになる。もともと本業の住宅事業は業績が悪くなく、キャッシュフローを十分生む体質だった。それにも拘わらず莫大な有利子負債が会社の屋台骨をゆすぶっていた。銀行が引当と差し替えに美味しい所を持っていくのも当然といえば当然のことだった。
  
しかし、ここで「失われた教訓」がひとつある。三澤氏も、若いIT企業家と同様、事業欲、投資欲の強い経営者だった。当時、どこの財閥にも属さず、わが道を切り開いて、ミサワホームを早い段階で上場したのだが、同時にセオリーになっていた「メインバンクとの株式の持ち合い」をしている。そして、株式の売り出しで三澤氏は自分の持株を一般株主に開放。ミサワの冠はあっても、実際のオーナーは彼ではなくなっていたのである。

直接金融、資本市場からの調達が、まだセオリーになっていなかったため、三澤氏は個人的に銀行から巨額の融資を受けて、前述の買収戦略を突き進めた。その結果、会社に莫大な株式損を与え、彼は事実上「裸の王様」へ成り下がっていたのである。したがって、銀行から歯止めもかかり、会社がどうしようもなくなる前に、企業価値は維持されることなる。皮肉にも現在、「ミサワホールディング」は大手企業の庇護の下、事業を継続しているのである。
  
10年前の私のこの経験は、その後、私が企業のファイナンス事業を行っていくうえで貴重なモチーフを与えてくれた。そう、それが今回のテーマである、上場会社を食い物にする一部の人間たちへの警鐘である。すなわち、悪意を持った彼らの「憎むべき行為」に対する警告となって現われていくのである。

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